チェーン・レクチャーのシラバス

2025年度

 

担当校 高野山大学
科目名 比較宗教の研究
講義題目

ことばと宗教

開講期間 前期2単位
開講日 原則として隔週 金曜5・6講時(16:40~18:10、18:20~19:50)
コーディネーター

溝端 悠朗(高野山大学専任講師)

概要

 私たちは「ことば」によって思考し、世界を認識している。その意味では、宗教もまた「ことば」によって成り立っているといえる。教えや思想は「ことば」によって成され、それが記された「正典」「聖典」と呼ばれる書物もまた、畢竟「ことば」によって構成されたものである。宗教と「ことば」は、切っても切れない関係なのである。

 しかし、「ことば」はまた、文化や時代によって大きく姿・形を変えてしまうものでもある。それは例えば、「翻訳」の問題にあらわれる。「正典」「聖典」を含めたあらゆる書物は、現代日本語で読むか、原語で読むかによって、読者に与える印象が変わることがしばしばある。場合によっては「誤訳」とされることもあるだろう。しかしながら、だからといってそれが一律に「誤り」として排除されるべきものであるかは、一考を要すると思われる。たとえ「誤り」であったとしても、それに基づいた信仰の形があれば、それもまた「ことば」による宗教のあり方であるからだ。
 また、「ことば」には芸術的な側面もある。宗教体験は時に「ことば」を超える感動を与えることがあるが、それを伝えようとするときにも、「ことば」が介在することがある。いわゆる「宗教文学」などと呼ばれるものが、まさにそれである。こうした「ことば」の働きは、宗教に何をもたらし、また宗教から何をもたらされているのだろうか。
 以上はあくまでも例であるが、「ことば」と宗教をめぐる問題系には、さまざまな宗教や文化の事情を背景にした、横断的な検討が必要となるだろう。そうした考えに基づき、本年度のチェーン・レクチャーでは、「ことば」を軸にして、さまざまな宗教における問題を取り上げる。それぞれの立場からの異なった視点を通して、受講生各位が「ことば」と宗教をめぐる問題意識を共有し、横断的な広い視野で「ことば」や宗教について考える機会を提供したい。なお、講義は同時双方向型のオンライン授業にて行う。

到達目標

〈知識・理解〉さまざまな宗教における「ことば」をめぐる問題を理解し、説明できる。

〈思考・判断〉さまざまな宗教における「ことば」をめぐる問題について、自らの考えを述べることができる。
〈関心・意欲〉さまざまな宗教における「ことば」をめぐる問題に関心を持っている。

授業計画

実施回開講日内容講師

第1回

4月11日 「授業の趣旨説明/和歌と仏教」 高野山大学専任講師 溝端悠朗
第2回 4月25日 「神祇信仰と言語」 皇學館大学助教 田井健治
第3回 5月9日 「経典の翻訳(漢訳)について」 大谷大学教授 釆睪晃
第4回 5月23日 「禅のことば」 花園大学准教授 小川太龍
第5回 6月6日 「中観学派とことば~「戯論」を中心として」 龍谷大学教授 三谷真澄
第6回 6月20日 「ユダヤ教における「ことば」と「行為」」 同志社大学教授 勝又悦子
第7回 7月4日 「アビダルマ仏教における言葉と世界」 佛教大学講師 田中裕成
第8回 7月18日 「授業のまとめ」 高野山大学専任講師 溝端悠朗

成績評価基準

各回の授業内に課す小レポートによって評価する(100%)。
小レポートは上記「到達目標」の〈知識・理解〉〈思考・判断〉の部分をもとに10点満点にて評価する。
上記「到達目標」の〈関心・意欲〉については、授業の出席状況によって評価する。